リラクゼーション音楽が私たちの心に与える影響
音楽は、単なる「心地よさ」だけにとどまらず、音楽の持つ構造や技法が私たちの心理や生理に深く作用していることが分かっています。
とりわけ注目されるのが、音楽の調性、旋律の構成、テンポ、リズム、和声、そして音色のあり方。
たとえば、メジャー(長調)の音楽は明るさや前向きさ、開放感を感じさせる効果があり、ドパミンやセロトニンといった快感や安心に関係する神経伝達物質の分泌を促すと考えられています。
これにより、軽度な不安の緩和や気分の高揚が期待でき、朝の目覚めや活動前の時間に適しています。
一方で、マイナー(短調)の音楽は哀愁や内省、静謐さを感じさせる要素を持ち、心の深い部分に触れて感情を解放するカタルシス効果があるとされます。
このような音楽を聴くと、脳内ではリラックスを示すα波やθ波が優位になり、瞑想や夜の休息時間などに適した状態をつくり出してくれるのです。
また、童謡的な要素、つまりシンプルで親しみやすい旋律や和音進行も、深い安心感を与える重要な要素です。
こうした構造は、幼い頃に聞いた子守唄や母親の声との記憶と結びつきやすく、安心や安全の原初的な感覚を呼び覚まします。
音程の跳躍が少なく、心拍や呼吸と同調しやすいテンポで構成された音楽は、特に小児医療や認知症ケアの現場でも活用されています。
さらに、テンポやリズムは自律神経に直接作用するといわれ、1分間に60〜70拍程度のゆったりしたテンポの音楽は、副交感神経を優位にして心拍数や呼吸を安定させ、深いリラクゼーションをもたらします。
規則的な拍子が繰り返されることで、予測可能性と安心感が増し、精神的な安定を感じやすくなるのです。
加えて、音の重なりである和声や音色の選び方も、リラクゼーション効果に大きな影響を及ぼします。
開放的な響きの和音や、空間的な広がりを感じさせるサウンドは、心を開かせるような感覚を誘い、持続音や自然音を組み合わせることで、時間の感覚を曖昧にし、意識をより深く内面へと導いてくれます。
ピアノやフルート、風鈴のような自然に近い音色は、脳の扁桃体の活動を抑え、不安をやわらげる作用も報告されています。
こうした要素を総合的に理解することで、リラクゼーション音楽は単なる背景音ではなく、心と体の状態に応じて意識的に選ぶべき「音の処方箋」となり得ます。
音楽の力を正しく活用すれば、ストレスや不眠の緩和、感情の調整において、私たちの日常をより豊かに支える重要なツールとなるのです。
ところで、、ある障害者施設でピアノ演奏主体の音楽療法が行われた際、最も大きな反応を見せたのが…
明るい長調、親しみやすいリズム、繰り返しの多いメロディ、童話的な歌詞で安心感や楽しさを呼び起こし、自然な身体の動きや表情を引き出すなど、音楽療法において非常に効果的な楽曲となったリンゴスターがリードボーカルのこの曲。
ビートルズの「イエロー・サブマリン」だったそうです。