音楽のテンポと心拍数の関係
「好きな音楽を聴くと気持ちが落ち着く」
そんな経験ありますよね?
音楽のテンポが、あなたの心拍数や自律神経に直接影響しているわけです。
テンポが速い曲を聴くと、自然と心拍が上がってくる。
逆に、ゆったりとしたテンポの音楽を聴くと、呼吸が深くなり、心拍も落ち着いていく。
つまり――あなたのカラダは、音のリズムに「同期」しているのです。
では、なぜこんな現象が起こるのでしょうか?
これは「エンタレインメント同期現象」と呼ばれるもの。
人間の脳は、一定のリズムを感じると、それに合わせて身体の動きや内部の生理反応を自然に調整し始めるんです。
たとえばテンポが120〜140のアップテンポな曲。
これは軽いジョギングの心拍数(1分あたり120〜140拍)とほぼ一致します。
だから、テンポの速い曲を聴くと、脳は「活動モード」に切り替わりやすくなる。
朝、なかなか目が覚めないときに元気な音楽を流せば、心拍が上がって自然に目覚めやすくなるわけです。
逆に、テンポが60〜80のバラード系の曲。
これはリラックス時の心拍数(1分あたり60〜80拍)に近いため、聴いているうちに心拍も下がり、気持ちが落ち着いてくる。
夜に寝つけない人に「クラシック音楽を聴きながら寝るといい」と言われるのは、科学的にも理にかなっているんですね。
たとえば、ビートルズの「Help!」は約174BPMという非常に速いテンポで知られています。
リズムに乗ると自然と心拍が上がり、気持ちも高揚しやすくなりますが、この曲の歌詞には「助けて」という切実な心の叫びが込められています。
実際、ジョン・レノンは当時、名声の重圧に苦しみ、本当に助けを求めていたと後に語っています。
一方で、彼が1971年に発表した「Imagine」は約75BPMというゆったりとしたテンポ。
穏やかなピアノとシンプルなメロディが、副交感神経を刺激し、聴く人の呼吸と心拍を落ち着かせてくれます。
この曲はジョンがオノ・ヨーコと共に過ごし、内面と向き合う生活をする中で生まれました。
彼はこう語っています。
「Imagine は、僕が心から願う世界を、静かに語るための曲なんだ」
わたしが好きなサザンオールスターズの代表曲とも言えるこの2曲を比較すると、、
「勝手にシンドバッド」は約138 BPMというアップテンポで、ラテン・ロックの明るいリズムが心拍を高め、聴く人を即座に情熱的な気分へと誘います。
一方、1979年の名バラード「いとしのエリー」は約69 BPMとゆったりしたテンポで、深い慈愛と内省を伴って副交感神経を優位にし、心を静かに落ち着かせます 。
テンポの違いは、音楽の印象だけでなく、心と体への影響にも直結しているのです。
同じジョンの音楽でも、テンポが変われば感じ方もまるで変わる。
それはまるで、心の状態が音として表出しているかのようです。
ここで、あなたに一つ提案があります。
「音楽を薬のように使ってみませんか?」
・朝、やる気が出ないときは、テンポ120以上のノリのいい音楽を。
・緊張しているときは、テンポ80以下の穏やかなメロディを。
・寝る前は、自然音やクラシックなど、テンポがゆったりした曲を。
つまり、音楽は気分を変える“スイッチ”なんです。
あなたが今、心のバランスを取り戻したいと感じているなら――
薬を飲む前に、ちょっと音楽を使ってみてください。
リズムが、あなたの呼吸と鼓動をそっと整えてくれるはずです。
音は、見えないけれど確かなチカラを持っています。
あなたの一日は、どんなテンポの音楽から始まるでしょうか?