アロマテラピーと自律神経
「アロマテラピー」、流行ってますよね。
その背景には、香りが自律神経系に影響を与えるという科学的な知見が、医学・心理学の分野でも少しずつ蓄積されてきたことがあります。
自律神経は、呼吸、血圧、消化、体温調節など、私たちの生命活動を24時間体制で支える“無意識の神経システム”です。
交感神経と副交感神経のバランスがとれていれば、日中は活動的に、夜は自然とリラックスできる状態を保てます。
しかし、現代人の生活ではストレスや過労、昼夜逆転などが当たり前になり、このバランスが崩れて慢性的な不調を訴える方が増えています。
アロマテラピーが働きかけるのは、まさにこの「神経の切り替え」に関わる部分です。
精油の香り成分は、まず嗅覚神経を通って脳に届きます。
特に大脳辺縁系――感情・記憶・本能的な反応を司る部位――や、視床下部という自律神経の中枢に直接影響を及ぼすとされ、薬剤のような即効性ではないものの、繰り返し使うことで心身の反応パターンに穏やかな変化をもたらします。
たとえば、ラベンダーやスイートオレンジ、ベルガモットといった精油には、副交感神経を優位にする作用が認められており、呼吸や心拍の安定、入眠の質の改善といった報告がいくつもあります。
ある研究では、看護師の夜勤前後にアロマを用いたところ、不安の軽減や脈拍の安定が見られたと報告されています。
一方で、ローズマリーやユーカリ、ペパーミントなどは、軽度の交感神経刺激をもたらし、眠気や倦怠感を払う助けになります。
朝の覚醒リズムを補助し、日中の集中力を高める補完療法として活用できます。
注意したいのは、アロマはあくまでも医療の補助であるという点です。
心身の状態に大きな不調がある場合は、まず医療機関での評価が必要です。
そのうえで、アロマは“神経の呼吸”を整えるような、やわらかな補助線として用いるとよいでしょう。
薬のように強くはないけれど、確かに作用する。
そんなアロマの力を、自律神経の波を整える日々の習慣として取り入れてみるのは、自然で優しい選択かもしれません。