眠りの扉を開く「シャヴァーサナ」──1日の終わりに、自分をゆるめる時間
夜、布団に入ってもなかなか眠れない日。
心がザワザワして、体は疲れているのに頭は冴えている…
そんなとき、あなたはどうしていますか?
ホットミルクを飲んだり、音楽を聴いたり、スマホをいじったり…
けれど、そんな“頑張ってリラックスしよう”とする行為さえも、実は心と体にとっては少し「がんばり」になっていることがあります。
そこでおすすめしたいのが、ヨガの最終ポーズ「シャヴァーサナ(屍のポーズ)」。
仰向けに寝て、両手両足を楽に広げ、ただ呼吸に意識を向けながら全身の力を抜いていく。
それだけの、とてもシンプルなポーズ。
でも、この“なにもしない”という時間が、実はとても深い癒しにつながっているのです。
「シャヴァーサナ」とはサンスクリット語で「屍(しかばね)」を意味します。
まるで動かなくなった体のように、思考も筋肉も手放す。
けれど、それは“死”のポーズではなく、“再生”のための休息なのです。
頭のてっぺんから足の先まで、少しずつ力を抜いていくことで、交感神経の緊張がほどけ、副交感神経がやさしく働き出します。
つまり、脳と体に「安心して眠っていいよ」と伝えるスイッチを入れるのです。
日中は、私たちの体はつねに小さな緊張を抱えています。
立っていても、座っていても、食事中も、誰かと話すときも。
だからこそ、夜には「何も考えず、何もしない時間」が必要です。
けれど多くの人にとって、それがいちばん難しい。
シャヴァーサナは、そんな現代人のための“脱力のレッスン”でもあります。
目を閉じて、ただ呼吸に耳をすます。
空気が鼻を通って、肺に広がっていく。
その静かな感覚に意識を預ける。
うまくできなくても大丈夫。
考えごとが浮かんできても、またそっと呼吸に戻ってくればいいのです。
3分でも、5分でもいい。心と体がふっとゆるむ感覚を、ぜひ味わってみてください。
眠る前のシャヴァーサナ。
それはただのヨガの一部ではなく、「自分を労わる」という優しい習慣。
1日の終わりに、“がんばる自分”から“ゆるむ自分”へと、そっとバトンを渡してあげる時間なのです。