ストレスがもたらす自律神経と血糖値の関係
ふだん、私たちは「血糖値」という言葉を聞くと、糖尿病や甘いものの食べ過ぎを思い浮かべがちです。
けれど実は、血糖値は「食事」だけでなく、「心の状態」にも大きく影響されていることをご存知でしょうか。
たとえば、強いストレスを感じたとき。
誰かに怒鳴られた、締切に追われて焦っている、過去の失敗を思い出して胸がざわつく…
そんな瞬間、あなたの体の中では交感神経が活発に働き始めています。
これはいわゆる「戦うか逃げるか」のモードで、体を危機から守るための本能的な反応です。
交感神経が優位になると、副腎からアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌され、肝臓に蓄えられていたブドウ糖が血液中に放出されます。
これにより、血糖値は一気に上昇します。
もし敵と戦う必要があるなら、筋肉を素早く動かすエネルギーが必要になるからです。
けれど、現代社会のストレスは、昔のような「外敵」ではなく、職場の人間関係やスマホから飛び込んでくる情報の洪水です。
体は緊急事態だと判断して血糖値を上げるけれど、実際には走るわけでも、戦うわけでもありません。
結果として、血糖が長く高い状態のままになりやすく、血糖調整のリズムが乱れてしまうのです。
これが慢性的に続くと、膵臓が分泌するインスリンの働きが鈍り、やがて「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態になります。
つまり、血糖値を下げにくい体質になってしまうということ。
さらに悪循環は続き、自律神経のバランスはますます崩れやすくなり、疲れやすさ・眠れなさ・イライラなどの不調にもつながっていきます。
ここで大切なのは、「血糖値は食べ物だけで決まるのではない」という事実です。
あなたがどんな生活をしているか、心がどんな風に動いているか、それらすべてが血糖の波をつくっているのです。
少しだけ深呼吸してから動き始める、スマホを閉じて10分だけ静かに過ごす、バスタイムで、ぬるめのお湯にゆったり浸かる…
そんな小さな習慣が、自律神経を整え、血糖値を穏やかに保つ支えになります。
ストレス社会に生きる私たちにとって、自律神経と血糖値のつながりを知ることは、「心と体の対話」を取り戻すきっかけになるかもしれません。