7月13日、東金市ふれあいセンターにて
千葉大学教育学部教授、磯邉 聡 先生の講演会が行われました。講演会の内容をまとめてみましたので、宜しければ参考になさって下さい。
思春期の子どもへの声のかけ方・関わり方
思春期との関わりについて
思春期は、心と身体の急激な変化に直面する時期であり、親や大人との関係も再構築されるタイミング。
生物学的な思春期は第二次成長とともに始まり、大腿骨など長管骨の成長部位の骨端線の閉鎖で終わると言われています。
この時期の子どもは、自立心と依存心の間で揺れ動き、自分らしさを模索しながら他者との距離を調整しようとします。
大人は、距離を取りつつも見守り、感情を受け止める柔軟な関わりが求められます。批判よりも「理解しようとする姿勢」が信頼関係を築く鍵です。
一方で、心理学的な思春期は心の成長と共に青年期に移行するが、終わりの定義はなく、もしかしたら大人の私たちにも幼少期の課題を残していることも少なくありません。
そういったことを踏まえて、子供との関わりを考えていきましょう。
1.エリクソンの発達課題
心理社会的発達理論を提唱したエリク・エリクソンは、人生を8つの段階に分け、それぞれに乗り越えるべき課題があるとしました。
(今回はそのうちの1から5つについて)
思春期(12〜20歳頃)は「同一性 」の段階であり、自分とは何者か、自分の価値や社会における役割を見つけることが課題です。
この時期に周囲からの受容や肯定的なフィードバックがあると、「自我同一性」が確立し、自信ある大人への成長に繋がります。
もし、このこころの宿題が解決していなくても、年齢が来れば次の課題は次々と来ます。ですから、人生に葛藤や悩みは付きものですし、大人だって悩むことも尽きないのです。ですから、受容ということがとても大切になってきます。
2.教育とは何か?
過剰適応というパターンがあります。これは、大人に悪い部分を見せない様に、仮の自分を見せる習慣のことです。
いわゆる「良い子」。
欠点や失敗をさらけ出すことに不安を過度に感じてしまう傾向があるとしたらいかがなものでしょう。成績のみ褒めるという偏りが過剰適応の原因になりかねません。
勉強は教育の一部でしかなく、もし登校に支障があったとしても、その時間をどの様に過ごすかの方が大切。教育とは、学校任せではなく全ての大人が子供の成長を見守り関わることです。
3. かかわりのヒント受容と許容
受容とは、相手の存在や感情・状態をそのまま認めること。
許容とは、相手の未熟さや間違いを一定の幅で受け止めること。
思春期の子どもに対しては、正しさを押しつけるのではなく、「その子の今」をまず受け入れることが大切。
カウンセラーは頑張りを褒めません。
出来ないことや存在を認めるということをしていきます。
ですが、すべてを許容する訳ではありません。次回、お話をさせて頂くまでに日時を決めたりルールがあります。好きな時にというわけにはいきません。
見たい時にすぐに見たいものが見られる、欲しい時に買ったら明日届くという今の時代に、「葛藤」を経験することはとても大切なことです。やりたいことが上手く出来ない、欲しいものがすぐに手に入らない、恋の返事に待ち焦がれる様に、時代的にもすべてが許容されない経験がとても大切なんだと思います。
その上で、自分を受け入れてもらえるという安心感が、次の行動への意欲や自己肯定感を高めます。
例:犬を飼ってくれたら勉強する
受容 本当は寂しかったんだね
許容 ごめんね、犬は飼えないけど、今度からもっと一緒に出かけようね
4. 5.失敗に対しての doing と being
・Doing(行動ベース):失敗した結果や行動にフォーカスする。「〜しなかったからダメ」「〜できなかったね」といった反応。また、解決に手を出しすぎたり、口を出しすぎたりする傾向です。
・Being(存在ベース):その人の存在自体に価値を見出す。「あなたは大切な存在」「失敗してもあなたはあなた」という反応。
思春期は失敗や挫折を多く経験する時期です。Doingの評価ばかりだと「価値のある自分」しか認められなくなります。Beingの関わりがあることで、「どんなときでも自分は受け入れられている」と感じ、失敗からの回復力が育ちます。
6.子どもは一人で育たない
雑談は、思春期の子どもとの心の距離を縮める大切な手段です。内容の深さよりも「日常的なつながり」を感じさせることに意味があります。
説教ではなく、気軽なやりとりの中で「この人は話を聞いてくれる」「一緒にいて安心できる」と思わせることが信頼関係の土台となります。
また、雑談は思わぬタイミングで本音が出るきっかけにもなります。
7.子育て四訓
思春期は心を離すな
例えば、自分の部屋に閉じこもることが心配、よくあることですね。それもまた自律の現れ、何を考えていて、何をしているのかに関心を持つことが大切です。
うるさいな、ほっといてという態度は元気で何よりだね、というくらいに考えて大丈夫です。
無関心や私物化、つまり気にしない、目に入らないなど関わりが薄い、また逆に自分の出来なかった夢を押し付けたりは考えものです。
過干渉になり過ぎず、ですが、少し小うるさいぐらいで丁度良いと思います。親は許容に立ちはだかる存在であることも大切です。
以上、講演会の内容を、まとめてみました。磯邉先生のお話しに語弊の無いようにまとめてみましたが、不明点や疑問点がありましたら遠慮なくご質問、ご相談頂きたいと思います。
磯邉先生はとても気さくな方でした。
千葉市内の中学校をはじめとして、数多くのカウンセリングの現場経験をお持ちの先生です。先生の雑談や経験されたお話しは分かりやすく、とても短く感じた一時間半でした。
私は現在、千葉大学医学部精神科が運営している株式会社メンサポが提供している認知行動療法を学んでおります。少々心得がある中での教育学部からの講義でしたので、腑に落ちることの連続でした。今後も学びを深め、更に地域貢献に尽くして参りたいと思います。
院長 谷嶋純市