薬に頼らず、血圧を下げるカギ
血圧の数値に心を振り回されていませんか。
毎年の健康診断で高めの数値を見るたびに、薬をすすめられるのではと不安になり、減塩や運動に取り組んでも思うように結果が出ない。
そんな状況に、どこかモヤモヤした気持ちを抱えている方は少なくありません。
実際、血圧を安定させるために努力している人はたくさんいます。
でも、多くの人が見落としていることがあります。
それは、血圧という数字を支配している本当の“司令塔”が、自律神経だということです。
交感神経が高ぶれば血圧は上がり、副交感神経が働けば血圧は下がる。
この仕組みがうまく働かなくなると、体のあちこちが緊張し、結果的に血圧が高止まりしてしまうのです。
私のところにも、病院で高血圧と診断され、薬をすすめられていた方が来院されました。その方はストレスも多く、常にお腹が張っていて、呼吸も浅くなっていました。
そこで私は、まずお腹のツボの緊張をゆるめる施術を行い、ご自宅でもできるようにお腹を伸ばすストレッチやドローイン、そして首と肩の体操をお伝えしました。
さらに、呼吸を深くするために森林浴をすすめたところ、数週間で血圧の数値が安定しはじめ、医師からも「薬は様子を見ましょう」と言われるまでに改善されたのです。
血圧をコントロールするために、お腹を整えるという発想はまだ一般的ではありませんが、実はとても理にかなっています。
副交感神経の要である「迷走神経」は腹腔内を走っており、お腹が緊張するとその働きが弱まりやすくなるのです。逆にお腹をやわらかく、温かく保つことで、神経の流れがスムーズになり、血圧は自然と整っていきます。
さらに、肺と腸の間には「肺大腸反射」と呼ばれるつながりがあり、呼吸が整うと腸も整いやすくなる。
西洋医学でも「脳腸相関」が注目されており、呼吸・腸・脳の三者が密接に連携して、自律神経全体のバランスを支えていることが分かってきました。
つまり、深い呼吸をすることは、腸を整え、神経を整え、血圧を整える――そんな連鎖反応を生むスイッチになるのです。
お腹をゆるめて、呼吸を深くする。
たったそれだけのことが、あなた自身のなかに眠る自然な調整力を呼び覚まし、体が本来のリズムを取り戻す助けになります。
血圧はただの数字ではなく、あなたの“自律神経の声”なのかもしれません。