日記を書くことでのストレス解消
私たちは日々、さまざまな出来事に心を揺さぶられながら生活しています。
楽しいことばかりでなく、イライラしたり、落ち込んだり、誰にも言えない不安を抱えていることもあるでしょう。
そんなとき、身近にできるセルフケアの一つとして「日記を書くこと」があります。
単なる記録ではなく、心の整理やストレス解消につながる行動として、心理学や神経生理学の面からも注目されています。
自律神経とは、呼吸や心拍、消化など、意識せずに体を調整してくれている神経です。
この自律神経は、ストレスによって交感神経が優位になると心身を緊張させ、反対にリラックスしていると副交感神経が優位になり、心が落ち着いていきます。
日記を書くことで、この自律神経のバランスを整えることができるのです。
たとえば、心の中に渦巻いているモヤモヤを言葉にするだけでも、脳はそれを「処理された情報」として受け止めやすくなります。
頭の中でぐるぐるしていた悩みや怒りが、紙の上にアウトプットされることで、自分の中から一歩外に出て距離を持つことができるのです。
このプロセスによって、扁桃体(へんとうたい)という感情をつかさどる脳の領域の過活動が静まり、同時に前頭前野という理性的に物事をとらえる場所が活性化されます。
その結果、呼吸や心拍も落ち着いてきて、副交感神経が働きやすくなり、全身がリラックス状態へと向かっていきます。
また、日記は他人に見せるものではないため、自分の気持ちを正直に表現できる場です。
泣きたくなるようなこと、誰にも理解されないと思っていたことも、書くことで自分自身に寄り添うことができます。
「つらかったね」「よくやったね」と、自分をねぎらう言葉を書くだけでも、自己肯定感が育まれ、精神的な回復力が高まっていくのです。
これはまさに、ストレスを抱えた自律神経に対する優しい手当てになります。
実践するうえで大切なのは、上手に書こうとしなくていいということ。漢字が間違っていても、言葉がうまくまとまらなくても、気にしなくて大丈夫です。
書くという行為そのものが、自分の心と身体をケアする時間になります。
寝る前の5分でもいいので、今日あったこと、感じたこと、ひとことでもメモするように書き出してみましょう。
そうすることで、一日の終わりに交感神経の興奮を鎮め、副交感神経がしっかり働ける環境が整います。
眠りの質も改善され、翌朝の目覚めもすっきりするでしょう。
ストレスの多い現代社会において、自分の内側に静かに耳を傾ける時間を持つことは、とても大切な習慣です。
日記は、誰でも今日から始められるセルフケアの第一歩です。
どうぞ、ご自身の自律神経をいたわるためにも、日記とペンを手に取ってみてください。